「よっしゃ、そんじゃコイツでも観んべ!まだ、眠たくねぇだろ?」
横浜でライブをやった後は、決まってハマの青大将・マットちゃんの家に泊まり、しこたまビールを飲みながらソファでゴロンと横になり、家主が激選した音楽ビデオを観ながら気絶するように眠りについていた。
まだDVDなる物がバンドマンの家に設置される以前の100年くらい前の話。
その日も、脂が乗りきっていた頃の片岡鶴太郎が紛する近藤マッチの「ギンギラ・ギン〜」を彷彿とさせるゲイリー・グリッター師匠のきらびやかステージや、本気なのかバカにしているのか素人目には判断が非常にむずかしい「恋はワイルド・シング」のオカリナ・ソロをキメるレグ・プレスリーのライブビデオを観て爆笑していた。
そして、ビールと眠気で目が半開きになってきた頃、冒頭のセリフと共に1本のビデオを家主はデッキに滑り込ませた。
そのビデオの背表紙に書かれたバンド名を、半開きの目で盗み読み
「あ〜、マイ・シャローナねぇ」
と、100人中95人が答えるような当たり障りの無い返事をし、家主にバレない様にそっと目を閉じようとしたが、映し出された映像を観て飛び起きた。
プロモビデオでは演奏のシーンをなんとなく観た事があったが、1枚目のアルバム発売直後と思われるそのライブ映像はとてもカッコ良く、どの曲も恐ろしく演奏が安定していた。
その日から、なんとなく知っていたTHE KNACKから、大好きなTHE KNACKになった。
リサイクル店の隅の100円レコードコーナーで見つける度に買って帰り、適当に友人に配ったりしてスーパー地味なファン活動をしていた。
そのレコードを配った友人の一人から、先日「ナックのヴォーカル死んじゃったね」と教えてもらった。
家のパソコンでそのニュースを観てヴォーカルのカタカナ表記が「ダグ・ファイガー」だと知った。「フィーガー」なのか「フィージャー」なのかあやふやだったが、スッキリした。
スーパー地味なファン活動はこれからも続く。

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