Interview with Ichiro
Robert Whiting(ロバート・ホワイティング)によると、日本の野球はアメリカでプレーされるのと同じゲームに見えますが、実際は違います。彼は、“サムライ式の野球”は日本人の人生観を反映したもので、集団意識や協力や勤勉というものを非常に重視すると主張します。2002年にロバート・ホワイティングは、日本式の野球対アメリカ式の野球を話し合うために、鈴木一郎をインタビューしました。
R:あなたは日本では最高の選手でしたが、あなたの試合は全国放送される事は滅多になく、スポーツ紙の一面を飾る事もほとんどありませんでした。ですが、あなたがシアトルに行って
全てが変わりました。(=事態は一変しました。)テレビであなたを毎日見て、日本人はあなたにとても興味を持つようになりました。あなたは母国で受けて良いはずの注目を得るために、はるばる外国まで行かなければならなかったなんて、皮肉な事だと思いませんか?
I:まぁ、一時的なものです。私はメジャーリーグでプレーする最初の日本人の
everyday position player(=毎日出 続ける野手)でした。でも、まだ2年しかやっていません。今の注目が5,6年も続 くのであれば、そう言えるかもしれません。
R:日本とアメリカの新聞には、有名選手が大勢アメリカに行っているので日本の野球界は大きなダメージを受けている、という話が多く載っています。あなたの意見はどうですか?
I:とても多くの選手がアメリカに行っているので、日本のプロ野球が魅力を失いつつあるという事は言えるでしょう。しかし短期的に見ればそれは真実かもしれませんが、長い目で見れば必ずしもそうだとは限りません。多くの日本人選手が大リーグに行ってプレーし、成功すればするほど日本の小さい子供達は野球選手になろうという気持ちになります。日本の野球の問題は、そこから成長していけるもっと大きな土台が必要だという事です。
マイナーリーグシステ(=2軍)はかなり限られていますから。そしてこの事が土台を広げるでしょうし、有望な選手は育ちます。ですからこの2,3年は日本にとって事態は悪く見えるかもしれませんが、長期的にはプラスになるでしょう。
R:あなたは日本で何シーズンかプレーし、今アメリカで2シーズンプレーしました。あなたは2つのシステムを見てきました。日本の春季
トレーニング(キャンプ)は新兵訓練のようです。それは2月1日に始まって1ヶ月続き、選手達は9時から5時までグラウンドにいて、さらに晩には練習やミーティングがあります。アメリカではキャンプはそれよりも1ヶ月遅く始まり、午前10時から午後1時まで選手はグラウンドにいて、その後に最寄りのプールやゴルフ場に行きます。この2つを比べてどのように考えますか?
I:日本のキャンプはかなり長いですが、4日ごとに1日の休みがあります。アメリカでは、一旦キャンプが始まると休み無しで毎日続きます。日本で4日ごとに1日の休みがあるという事実は大きな救いです。さらにアメリカではキャンプでの1日は3時間だけですが、マリナーズが練習するアリゾナの太陽は全く別物です。だから私は日本から来ましたが、それは全然楽だとは思いませんでした。きつかったです。
R:日本のキャンプの多くの時間を、プッシュバントなどのシーズン中にたった1,2回しか使わないかもしれない細かいことに費やしますよね。それと、いわゆるサインプレーや中継プレーといった練習があります。シアトル(マリナーズ)ではどうですか?
I:全然ありません。私がここに来てから2年間全然。私はああいった種類の練習はとても大事だと思います。春季トレーニングはチームプレーに取り組まなければならない唯一の時間ですし、貴重なものだと思います。マリナーズはそういった事をしないので、選手達は時々ミスをするのです。そして私が「春季トレーニングでそのようなプレーに取り組んでおくべきだった。」と思うのは、そのような時でした。ですから、細かい事に注意するのは日本の野球の良いところの1つだと思います。
R:バッティングについて聞かせて下さい。あなたは日本では3番を打ち、外野へ抜けるライナーのヒットを量産しました。アメリカでは1番バッターとして、内野に向けて地面に叩きつけるような球を量産しました。バッティングスタイルは意図的に変えたのですか?
I:意図的に変えた訳では無いのですが、フライを打つと監督がひどくイライラするのです。彼はゴロを望んでいて、私は打席に着くとその事を思い出すのです。
R:アメリカでスランプに陥った時は誰のところにアドバイスを求めに行くのですか?
I:誰のところにも行きません。スランプになったら自分自身にアドバイスを求めます。
R:松井がアメリカに来ることになっています。多くの人々が彼が素晴らしいホームランスターになる事を期待しています。彼がここで成功するために、何か特別なアドバイスはありますか?
I:彼はとても困難な環境にいると気付くでしょう。ファンやメディアの間で頻繁に話をされたり、期待も大きいでしょうが、彼は自分なりの目標を定め、周囲の人々の言う事によってそれを変えるべきではありません。個人的に“成功”という言葉は好きではありません。なぜならこれは大抵誰か他の人が定義したことであって自分が定義したことではないのです。松井は自分の中で自分なりの目標を設定して、何が成功したシーズンであるのかを自分で決めないといけません。それが重要なことです。それに彼は新しい違った世界に行くのだから、居心地が良く落ち着いていられる環境を作らなければいけません。
R:アメリカのメジャーリーグの野球を見る時、何かアメリカ的な特徴と呼んでも良さそうなものはありますか?
I:そうですね。選手達は皆とても個人主義です。彼らは皆それぞれに違っていて、自分なりのキャラクターを持っています。
R:日本の野球を見る時、何を見つけますか?何か日本人の特徴と呼んでも良さそうなものは見出せますか?
I:日本人はよく自分の感情を隠します。それは日本人の特徴です。
R:あなたのお父さんは、(あなたが)小学校の時からあなたを訓練し始めました。そして毎日放課後に名古屋の公園で何時間も鍛え、晩にはよくバッティングセンターで1晩に250回バットを振って過ごしたものでした。野球の練習がしたくない場合はありましたか?
I:時にそれは耐え難かったです。
R:私はあなたのお父さんが書いた“息子イチロー”を読みました。彼によると、父親が息子に幼い頃から厳しい訓練を受けさせる“巨人の星”の登場人物と、あなたの歩んできた話は全く違います。しかしあなたの言う事から判断すると、それはほんの少し“巨人の星”に似ていました。あなたのお父さんによると、彼があなたに受けさせたものはスパルタ訓練ではなく、楽しいものでした。父と息子はともに楽しんでいた、と。
I:彼はやっていて楽しかったと言います。しかしそれは、それ程楽しくはありませんでした。それは全く“巨人の星”にそっくりでした。

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