古来より犬は人間の善きパートナーであり信仰の対象にまでなったりする不思議な生き物だ。人は犬に癒されたり、はたまた助けられたり、崇めたり、するのである。有名なのは、江戸時代にあった生類憐れみの令ね。犬は犬でなく、その時代は、お犬様。人間より偉かったのだ。お犬様が歩くと人はお犬様がいなくなるまで土下座して待たなくちゃならなかった。だが、それ以前より、陰陽道なんかで、お犬様は、道祖神。といった神様として信仰の対象だった。この世ならぬ魔界においても犬は道に迷うことはない。と思われてたわけである。実際、犬は他の生き物より方向感覚がかなり優れている。と科学的にも証明されてる。そういえばその昔、マリリンという犬が海を渡って誰かに会いにいったという映画があったが、勿論観てないからよくわかんない。
英語ではDOG。ひっくり返せばGODである。だからなに?って感じですが…。
まぁ、世界的にどぉだかわかんないけど、とかく日本においては犬はすげぇ愛されてるわけで、映画、ドラマ、アニメ、といった具合に犬をメインキャストに据えれば外れはない。といった具合にメディアにおいてもモテモテなわけであるが、ここ最近で一番フェイマスな犬といえば、やはりソフトバンクのお父さん犬といって間違いないだろう。樋口可奈子を妻にもち上戸彩が娘でヒップホップとかやりそうにない黒人が息子の北大路欣也の声をしたあの犬である。
あのようにメディアで毎日お父さんとしてテレビに写しださられると、これが日本における理想のお父さんなんではなかろうか?と犬に対してポテンシャル以上の何かを求めてしまう事だってあるわけで、高度資本主義社会が成熟しつつある現代日本における父権の新しい在り方として注目に値する。
さて、オレの周りでも愛犬家は多い。例えば、コトヨリ君。今は犬は飼ってないが、彼はカンタという雑種の犬を長年飼っていた。彼とは高校以来の付き合いになるのだが彼の家に遊びにいくたんびオレはカンタに吠えまくられた。その雄叫びは明らかに戯れの範囲をこえて威嚇であった。全くもってムカつく犬であった。が、エキセントリックな彼に果たして真の友と呼べる人間がいたのかは甚だ疑わしいがカンタは彼にとって肉親以上の精神的な繋がりがあったのではなかろうか。彼はカンタが亡くなった後カンタの遺骨と共にカンタの散歩コースを泣きながら歩いた。というおよそ彼のパブリックイメージから程遠いエピソードをもっている。
そして、もう一人。オレが働く下北沢・古書バー赤いドリルのオーナー、ナっさんだ。基本、ナっさんは仕事の時以外は愛犬のフィーちゃんというチワワと一緒だ。そして、ナっさんの場合、愛するフィーちゃんは飼っている犬ではなく家族の一員なのだ。だからフィーちゃんの年齢を聞いて、それを人間の年齢にあてはめたりすると機嫌が悪くなったりする。ナっさんの家族とフィーちゃんが一緒にいる光景というのは、フィーちゃんのポジションはもちろんお父さんではないが、基本的に喋らないだけでソフトバンクのコマーシャルで見る幸せそうな家族の風景と変わらないのだ。
さて、そんな愛犬家のナっさんが先日、長年愛用してたドコモの携帯が壊れたので、これを機にソフトバンクのアイホンに変えようとソフトバンクのショップにフィーちゃんと訪れた。
その時、信じられない注意を店員からされた。お客様、犬を店内に持ち込まないでいただけますか。と!
これだけメディアにおいて大量に垂れ流されてる、愛すべきお父さん=白い犬。というイメージ戦略を展開するソフトバンクが、犬を店内に持ち込むな。と、家族構成の一人として愛するフィーちゃんを物扱いするのか?店内を見ると犬のポスターがベタベタ貼ってあるにもかかわらず!せめて、申し訳ありません、ワンちゃんは外でお待ちいただいてもよろしいですか?とかじゃねーの?ホントわけわからんよ。んだったら、きちんと画面上で、あくまでもCMです。みたいな注意書きしろよな。あの白い犬、温泉旅館で飯喰ったり、居酒屋で酒飲んだりしてんじゃんな。まったくよ!ふざけんなよ。ソフトバンクよ。とナっさんは怒りながらも手に入れたアイホンを楽しそうにいじくってた。
というわけで、ニッパチな季節がやってきました。最近さぶいせいかお店も閑古鳥気味。バータイムにナっさんがアイホンをいじくって遊ばないようにみんな赤いドリルに遊びにきましょう。よろしくです。
お土産をもって遊びにきたクスモト。来る知り合いに彼の悪口を言うオレが凄く小さい人間に見える。とはナっさんの談話。ワンワン!


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