我が家のパソコンがシレ〜とヘソを曲げたのは一ヶ月前のこと。
突然、画面全体が白っぽく光はじめて、文字を読むにも画像を見るにも必要以上に眩し過ぎて、どうにもタマラン電脳生活の日々。
明度やコントラスト調整ボタンをいくらポチポチやっても、はたまた、別のモニターを引っ張り出してつないでみても、その強烈な明るさは一向におさまる気配が無く燦々と輝く日々。
ライブハウスでのリハーサル時、「PA&照明への要望事項」なる書類を提出する際には「ストロボ、もしくは小刻みなスイッチングによる『チカチカ』はNGで」と、律儀に毎回書き添えるほど、強烈な明るさに弱いモグラ体質な俺にとってホント地獄の電脳生活。
そんな業を強いられながらも健気に働いていた先日の昼休み、仕事仲間のK氏が家電量販店の折り込みチラシ片手に
「このパソコン激安だよ。2.9800円でモニターも付いてるよ」
との情報。
「明後日限定で抽選20名だってよ。キング、一緒に行って当てちゃおうよ」
とのスーパー脳天気で無邪気な誘い。
「いいっスねぇ。当てちゃいましょうか」
と、盛り上がっていると他の仕事仲間から
「舐めてると大変だぞ」
とのシビアな忠告。
ネットワークを駆使した電脳キッズ達の迅速な行動力や、特売商品だけを狙った中国系の組織達のフォーメーション等々…。
先着順の商品ですら無事に手にするには相当な気合が必要らしいとの事。
そんな話を聞いて「そりゃ、ウチら素人は手が出せん」と、枕濡らして泣き寝入りしたトコロで我が家のパソコンは真っ白けのままなので、運試しに突撃を決行したのは開店2時間前の朝の8時。
そこには、どう見てもパソコンを買う前に家を探したほうが良さそうなストリート系集団や、噂の特売品名物の中国系軍団の列。
それでも一緒に行って「当てちゃおうよ」とノリノリで待ち合わせを約束したK氏の姿はまだの様子。
早朝の寒さに震えながら列の最後尾に一人ポツンと並ぶと、一斉に「お前も並ぶのか?」と周りから挑戦的な視線を集め、ポッケからカイロ代わりに入れていた熱々缶コーヒーを取り出せば、またジロリと一斉にニラまれる始末。
最初のうちは緊張していたが、ピリピリしながら開店時間を待つのもアホらしいという至極真っ当な事に気がつき、思い切って前列のオバチャンに
「今朝は寒いね。日本語分かる?寒い?分かる?」
と、その場の全員に聞こえるくらいのデカイ声で話かけたトコロ、前の方にいた別のオバチャンがグングンと近づいて来て
「『サムイ』クライ、ワカルヨ!キョウ、イチバン、サムイ!」
と、半ギレしなが答えてきた。
そのやりとりをきっかけに、今まで一定の距離を保ちながら様子を伺っていた中国人グループが一斉に俺の周りに集まり
「オマエ、ナニ人?アメリカ人?」
「キョウ、ナニ買う?」
と、次々に質問攻め。
それまでのひとりぽっちの孤独感から開放され、一気に暇つぶしには好都合な状況になったので、微塵もその圧力に怯む事なく調子よくしゃべっていたら、何故かみんなに気に入られてしまったようで
「オマエ、モット前二並べ、ココ並べ」
と、グイグイと前列のほうに引っ張られる始末。
待ち合わせの約束をしたK氏が到着した頃には、俺が広げるチラシを中心に中国人グループが輪になって集まり、来週はどの店に並ぶかを作戦会議するほどに。
その場で教えてもらった「寒い」の中国語を俺が発する度に、何故か一同がドッと笑うというお約束な流れも完成。
そんな予想外にオモシロかった先着20名の特売パソコン抽選会。
結局、50名ほど集まった時点で定員締切となり、我ら中国人グループの中からも5名が見事当選。
しかも、その5名のうちの2人は「今日は当てちゃうよ」とスーパー脳天気に連呼しながら並んで、周りの中国人から呆れられていたK氏と俺でした。
真新しい21.5型の大画面に向かい、心地よい弾け方のキーボードでブログを書いたら、結構な長文になりました。

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