今日はアカデミー賞2部門を受賞した話題作「ハクソー・リッジ」を観て来ました。
これは第二次大戦期、武器を持たず戦場を駆け回り75人の負傷兵を助けた衛生兵デズモンド・ドスの半生を描いた作品。
監督は約10年ぶりの作品となるメル・ギブソン。
メル・ギブソンといえば「マッドマックス」シリーズや「リーサル・ウェポン」シリーズでの主演をはじめ、「ブレイブハート」ではアカデミー賞監督賞を受賞するなど才能豊かな俳優。
ただ、ここ最近はDVや人種差別発言などかなり悪いイメージがついてまわり、ハリウッドからも干されていた人物。(個人的にはファンですが)
そんな彼の復活作としても話題の本作。
かなり熱心なカトリック教徒でもあり、本作ではその影響がかなり出ていました。
タイトルとなった“ハクソー・リッジ”は激戦地となった沖縄の前田高地のこと。
この時期に沖縄戦を題材とした映画が公開されるっていうのも何だか凄いタイミングです…。
まずこの作品で重要なキーワードとなるのが“Conscientious Objector”という言葉。
度々セリフにも登場しますが、初めて聞いた言葉。(戦争映画はかなり観てるはずのですが初めて聞いた…)
これは“良心的兵役拒否”といって、どうやら戦争が嫌で兵役を拒否できる権利らしく、デズモンドはこの罪に問われています。
しかしデズモンドは自ら志願し、衛生兵としてアメリカへ自分の身を捧げていて、この“矛盾”はマーティン・スコセッシ監督のアプローチとかなり似ています。
「沈黙〜サイレント〜」とも共通する内容ってのも興味深いですね。(信仰心や信念、矛盾、神の声を聞こうとすること
など)
デズモンドが「信念を曲げてしまっては生きてはいけない」というセリフがありますが、信仰心からか自分の中の(武器を持たないという)誓いこそが彼の生きる証だったのです。
この信念は「ブレイブハート」のウィリアム・ウォレスにも共通していて(彼も最初は戦いたくなかった。そして戦うことで周りの人間が感化されていく。ドスも同じ。)、この手のドラマを作り出すのがホントに上手い!
そして公開前から話題になった過激すぎる戦場シーン。
「プライベート・ライアン」以降、戦争映画の過激描写は増えていきますが、メル・ギブソンは「ブレイブハート」や「パッション」などでもかなり過激なシーンを撮っていて、ある意味ここが持ち味か。(「パッション」ではキリストが鞭で打たれるシーンを観た人があまりの過激描写ぷりでショック死したとのこと…しかも公開当時4人の人が亡くなった)
リアルを追究し、過去のアクション作品では自身もスタントシーンをこなしているメル・ギブソンは本作の爆破シーンでもCGは使わず、全てライブ撮影とのこと!
スタントマンを危険にさらさないことを考慮し、安全な瓦礫や発光物質を詰め込んだ装置を作り撮影したんだとか。
ここまで目を背けたくなるようなシーンを撮影したのもインタビューで
「戦争は容赦ない。人間を動物レベルまで引き下げてしまう。」と語っていました。
沖縄戦線だけに日本人には酷ですが、先日公開された「レイルロード・タイガー」を“坑日映画だ!”と言ってる輩がいましたが、本作みたいなのが“坑日映画”とか言うんじゃないのか?
まぁ、中国じゃないから坑日とは言わないか…
そして監督はこうも言ってました。
「こんなところ(戦場)には行きたくないと思ってほしかった。
銃を持って戦うことがカッコいいなんて思われちゃ困るんだよ!」
サバイバルゲームを楽しんでるやつらにぜひ聞かせてやりたい言葉です。