※ネタバレ注意
今日は「クリード 炎の宿敵」を鑑賞。
この作品は、新しく「ロッキー」シリーズを甦らせた「クリード チャンプを継ぐ男」の3年ぶりとなる続編。
監督はスティーヴン・ケイプルJr.。
製作&脚本&出演はシルヴェスター・スタローン。
製作総指揮&主演はマイケル・B・ジョーダン。
待望のシリーズ第2弾!
今回は「ロッキー4 炎の友情」に登場したイワン・ドラゴの息子ヴィクター・ドラゴにアドニスが挑戦するということで"ロッキー"シリーズ・ファンにとっても胸アツな内容。
で、感想は…
終始、泣きっぱなしの感動作でした!
最初はドラゴの息子とアポロの息子の戦いなんて「単純だなぁ」と思っていましたが(公開が近づくにつれて、期待は膨らみましたが。)、ここまで深く人間ドラマを描いた内容だとは思いもしませんでした。
基本プロットは「ロッキー3」とほぼ同じ。
栄光を掴みチャンプになったアドニス。
ロッキーが反対するにも関わらず、ロッキーがセコンドに付かないままヴィクター・ドラゴの挑戦を受け、負けてしまいます。
この流れは「ロッキー3」と全く一緒。(チャンプになり人気者になったロッキーはミッキー不在のままラングの挑戦を受け、負けてしまいます。
※ミッキーは試合には同行するも持病の心臓病で控え室で重体に。その後死亡。)
本作はこの基本プロットに、アドニスが苦悩する"クリード"という名の重圧と"父親"としての"迷い"を描くことにより「ロッキー3」とはまた違ったドラマを生み出したことが凄い!
そしてヴィクター・ドラゴもまたイワン・ドラゴから続く"宿命"に翻弄されるキャラクターとして描かれていて、このアドニスとの対比が素晴らしかった。
劇中、デュークのジムにアポロの姿が描かれたガラス張りの窓と並んでいるアドニスが何度も登場するシーンがあり、これは"アポロ・クリード"の名前に重圧を感じているというメタファー。(そこから逃げ出してしまう描写もあり。)
アドニスがプールでトレーニングするシーンでも水中の背景に黒い十字架のようなコースラインが映りますが、これもアドニスの後ろに黒に十字架…すなわち"アポロ"の影を背負っている描写。
この"アポロ"を背負ってしまうが故に試合では負けてしまうのですが、ラストのヴィクターとの再試合では黒い星条旗のトランクスで試合に挑みます。
これは"アポロ・クリード"という重圧から解かれ(葬り)、アドニスが自分自身らしく生きていくと決断した証。
その最も重要なメタファーとなるのがアドニスとビアンカの間に産まれてくるアマーラの存在。
彼女はビアンカの遺伝により耳に障害を持って産まれてきます。
ロッキーはアドニスに「彼女(アマーラ)は自分を憐れんではいない!」と強く諭します。
自分の置かれた状況(耳の障害)を受け入れこの世に産まれてきたアマーラを見てアドニスは初めて"クリード"という名を素直に受け入れることが出来、そして自分が"アポロの息子"としてではなく、アドニス・クリードとして生きていくかを決心するのです。
先にアドニスとヴィクターの対比ということを話しましたが、ヴィクターもまたイワン・ドラゴから怒り(憎しみ)だけを受け継いで生きてきた人物。
ラストでのアドニスとの試合に負けたヴィクター。
彼もまたアドニスとの試合を通じて重圧から解き放たれます。(怒りでしか感情を表現出来ないヴィクターは試合に負けた途端、泣きじゃくっています。厳しかったイワンも初めてヴィクターを優しく抱きしめます。)
そしてロッキーもまた自分の息子と距離を置いており、その理由も"ロッキーの息子"であるということに重圧を感じさせないようにする為。
ずっと(重圧により)父親アポロのお墓に行けなかったアドニスは、ビアンカとアマーラを連れアポロのお墓へ行きます。
そんなアドニス一家の姿を見たロッキーは長い間距離を置いていた息子に遂に会いに行きます。
このラスト・シーンで感じたのが、シルヴェスター・スタローンの息子セイジ・スタローン(「ロッキー5」でデビュー!)との関係。
彼は36歳でこの世を去っていて、ラストにロッキーが息子(孫)に会いに行くシーンなんかは、スタローンが"もし息子が生きていたら"ということを思いながら脚本を書いたのかも…。
セイジ・スタローンもアドニス同様に偉大な父親を持ちながらも俳優として活動するもどれも脇役ばかりで成功せずに自宅で心臓病により亡くなってしまいました。(当時は原因不明とされていた。)
そう思うとこのラスト、余計に泣けてきます。
そして「ロッキー」シリーズといえばビル・コンティの音楽も印象深いですが、本作は前作に引き続きルドウィク・ゴランソンが担当。
これがまためちゃくちゃカッコ良く、ビル・コンティの"First Date"(←この曲が流れた時は鳥肌ものでした。)などの名曲を上手く使い、こちらも作品同様に"新旧"のコラボで盛り上げています。
そして「ロッキー」シリーズのファンにはたまらないオマージュ・シーンが本作でも随所に見られるのも嬉しい要素。
冒頭、アドニスがビアンカにプロポーズするシーンは「ロッキー2」へのオマージュ。
補聴器をしてないことを気付かずプロポーズをするアドニスは再びプロポーズ。
「ロッキー2」でもエイドリアンは耳あてをしていてロッキーのプロポーズが聞こえず、ロッキーは再びプロポーズします。
チャンピオンになり環境が変わったアドニスたちと厳しい環境の中でトレーニングをするヴィクターとの対比のシーンは「ロッキー3」のオマージュ。
その他にもフィラデルフィア美術館の階段を観光客がかけ上がるカメラ・アングルや砂漠のジムでトレーニングしているアドニスのランニング・シーンのカメラ・アングルも「ロッキー」を彷彿。
あとはドラム缶(「ロッキー」での冒頭のシーンをはじめ、色々なシーンでドラム缶が登場)やロッキーのボール、そしてロッキーの手帳(ガッツォから取り立ての相手を聞きメモしていた手帳)など挙げたらキリがないくらいのオマージュ・シーン(ブリジット・ニールセンの出演は驚き!)が。
てな訳で、前作以上に素晴らしい出来だった今回の続編。
シリーズ7作品ある中でも1、2位を争うくらい素晴らしい作品でした。