※ネタバレ注意
今日は「ロケットマン」を鑑賞。
この作品は5度のグラミー賞受賞をはじめ、数々の成功を収めてきたアーティスト、エルトン・ジョンの半生を描いた作品。
監督はデクスター・フレッチャー。
出演はタロン・エガートン、ジェイミー・ベル、ブライス・ダラス・ハワード他。
昨年大ヒットした「ボヘミアン・ラプソディ」の仕上げに携わったデクスター・フレッチャーが今度はエルトン・ジョンの半生を描き、しかもエルトン・ジョン本人が製作総指揮ということで話題となった作品がいよいよ公開。
本作は子供時代から70年代のブレイク期、そして依存症によりリハビリ施設に入所する90年代までを描いています。
今回エルトン・ジョンを演じたタロン・エガートンといえば、2016年公開のイルミネーション作品「SING/シング」でゴリラのダニーの声を担当。
この作品はビートルズをはじめ、スティービー・ワンダーやレディ・ガガ等の楽曲を動物たちが歌うといった内容ですが、劇中でダニーは、エルトン・ジョンの"I’m Still Standing"を歌います。(「ロケットマン」でもこの曲がラスト・シーンで使用。)
その他に2017年公開の「キングスマン:ゴールデン・サークル」でもエルトン・ジョン本人と共演しており、今回のエルトン・ジョン役は必然的に彼が演じるようになっていたのではと思えるほど縁を感じます。
しかも歌が上手い!(何と吹替え無し!)
「ボヘミアン・ラプソディ」のラミ・マレックの完コピとは違い、エルトンの物真似をあえてしなかったことが逆に良かった。
色々と「ボヘミアン・ラプソディ」と比べられそうですが、本作は全く逆のアプローチで製作されていたのが特徴。(「ボヘミアン・ラプソディ」はある程度クイーンの歴史に忠実に、本作は歴史を敢えて無視。)
一番の特徴がミュージカル仕立てになっていたこと。
エルトン・ジョンの"苦悩"や"葛藤"、"願望"など当時の想いを自らが回想していき、語られているようなストーリー展開の為、時系列はバラバラ。(「ボヘミアン・ラプソディ」も時系列はバラバラですが、それよりも更にバラバラ。)
特に劇中、有名なトルバドールでの最初のアメリカ公演(1971年)で歌っていたのは"Crocodile Rock"ですが、この曲が発表されたのが1973年。
その他にもリハビリ施設に入所していた時にバーニー・トーピンがエルトンに会いに来て、"I'm Still Standing"の歌詞を渡した描写がありますが、この曲は80年代のエルトンを代表する曲(アルバム「Too Low For Zero」収録)で、1983年に発表。
エルトンがリハビリ施設に入所したのが90年からなので辻褄が合いません。
あくまでエルトンの楽曲の歌詞に当時の想いを乗せた形で人生を振り返っていく為、時系列がバラバラなんですね。
但し、かわいそうだったのが1984年にドイツ人の音響技師レネーテ・ブリューエルと結婚した描写。
かなりあっさりと描かれていて、あっという間に離婚のシーン。
元々エルトンもこの結婚についてあまり語りたがらなかったこともあり、このシーンもホントは触れたくなかったんでしょう。
このようにかなり時系列がバラバラな訳ですが、これも冒頭が"エルトン・ジョン"による回想を元に始まるところがミソ。
全てが回想ベースとなっているのでミュージカル・シーンも違和感なく観れます。(つまり回想すらイマジネーションの世界)
「ボヘミアン・ラプソディ」では"LIVE AID"というクライマックスが用意されていましたが、本作ではクライマックスはありません。
"I'm Still Standing"のPVの再現などもありますが、一番肝心だったシーンは冒頭で家族全員が歌う"I Want Love"のシーン。
作品全体を観終わって、この最初の"I Want Love"のシーンが一番重要だったような気がします。(あとラストの大人になったエルトンが子供時代のエルトンを抱きしめるシーン。要するに愛に飢えてたということ。)
素晴らしかったのはバーニー・トーピンのことをかなり丁寧に描いていたこと。
やはりエルトンにとっては特別な存在で、盟友2人の固い絆が感じられました。
そんなバーニーとの数々のシーンで特に感動したのが"Goodbye Yellow Brick Road"のシーン。
この曲、実は2回登場する訳ですが(本編始まる前のシーンを入れたら3回)、前半はエルトンと衝突したバーニー・トーピンが、後半では自分自身と向き合ったエルトンが歌います。
同じ歌なのに二人の心情が違うだけでこれほど意味が違って聞こえることに感動。
改めて名曲だなぁと感じました。
その他にもディック・ジェームス(ノーザン・ソングス設立者)の前で改名をするシーンで、"エルトン・ジョン"という名前をビートルズのジョン・レノンから取った描写がありましたが、これは全くのフェイクで、事実とは違います。(ホントはエルトンが居たブルーソロジーというバンドのエルトン・ディーンとロング・ジョン・ボールドリーから取られた。)
"Your Song"のレコーディング・シーンではちゃっかりジャイルズ・マーティンの姿なんかも♪(ファンはチェック!)
※同じく"Your Song"がキーとなる2001年公開の「ムーラン・ルージュ」でのユアン・マクレガーの歌唱力も素晴らしい!
「ボヘミアン・ラプソディ」はフレディを美化していたのに対し、本作は全てをさらけ出したエルトン自身を描いた良作でした。
はたして「ボヘミアン」越えなるか!?