「ご先祖様からのパワーが弱くなってるから、キチンとお墓参りに行けって言ってたよ」
と突然切り出したのは俺のガールフレンド。
何でも、占い師に自分をみてもらったついでに彼氏の事もみてもらったら、ズバリ言われたご様子。
雑誌やテレビの占いコーナーなぞにはコンマ3秒も目を留めた事もなく、ヒロ・ヴィシャス気取りで日夜ノー・フューチャーを決め込んでいたが、ガールフレンド&ご先祖様の言うことには耳を傾けがちな性分としては、「う〜む。府中のオジさんが夢枕に立って『顔見せろ』と説教喰らってからも結局は行ってねぇな。スルドイ指摘しやがるな」と、すこぶる素直に納得。
そんなスルドイ指摘を受けたその日の夜に突然家の電話が鳴り響き、受話器のスピーカーから聞こえてきた用件は
「夜分にスミマセン。突然なんッスけど、明日ヒマだったらビリーさんの墓参りに行きませか?」
との事。
先週の平日の話。
真っ当な大人なら、明日の仕事に備えてボチボチと床につく準備をしだす時間の勧誘。
真っ当過ぎて不運にも変人扱いされる大人としては、慌てず騒がず翌日のスケジュールをキッチリ踏まえた上で、その勧誘に諭すようにした返事は
「うん、行く。明日な〜んも予定無いから」
っちゅう訳で、誘った側から「え?明日だけど大丈夫?」と何度か念を押される度に「大丈夫だぁ〜」と力強く返答し、ビリーさんの墓参りに行ってきた。
平日の真昼間から真っ当過ぎて不運にも変人扱いされる大人達が集まって。

どんよりとした雲の下、高速道路を何キロか走る度に雨が降ったり止んだりしつつも、「来ちゃいました。こんちわッス」とビリーさんに挨拶する頃には、狙ったように雲の切れ間から太陽が顔を出し、すこぶる心地良い春の日差しのピンスポット。
そんなピンスポットな柔らかな日差しに誘われて、「この後、どこか観光して帰るべか?」と、今回の墓参リーダー・トミーのナイスな提案。
「那須高原に行って、俺のホーミーで牛を集めてみたい!」
と、至極ピンスポットな欲求かつ挑戦を提案するも満場一致の秒殺で却下され、車はスルスルと日光東照宮へ。
ビリーさんとの再会に包まれた日差しが嘘であったかのように、日光東照宮に近づくたびにどんよりとした雲は厚みを増し、ノウ天気に「大丈夫だぁ〜」と連呼をしていた俺の声を蹴散らすかのように車のフロントガラスにはバチバチと雨粒が砕け散る音が響き、墓参リーダー・トミーが途中で一時停不停止違反でパトカーに止められるというイベントを挟みながらも何とか到着した頃には、雨がみぞれに変わり、参道にはウッスラ雪が積もっていた。
Gジャンには奥歯ガチガチの強烈な寒さ。
山の気温変化をナメきった都会慣れした変人モヤシ達を哀れんでか、駐車場の管理人が貸してくれた傘をみぞれ混じりの雨が降る中に広げて、寒さに震えながらもエテ公やニャンコの彫刻を知ったかぶりに唸ったりしつつ、キッチリ大権現様のお墓にお参り。
そんでもって、願いが叶う杉の木のお賽銭箱にポンと10円玉投げいれて
「ボキがやっているバンドが、もうちょっと、もうちょっとでいいから皆から褒めてもらえますように」
と、世界平和や人類愛そっちのけの私利私欲で手を合わせようとしたトコロ、投げ入れた10円玉が賽銭箱の底にチャリンと落ちること無く、格子に対して垂直かつ直角に音も無くサクッと挟まり、イースター島のモアイ像の如く「なぜ、こんな所にこんなモノが!」と、異様な存在感で中途半端に格子上に浮いた(刺さった)状態で10円玉が留まり、周りの参拝者のザワめきを誘う始末。
断られたのか、派手に了解してくれたのか。
思わせぶりな態度が憎めない。

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